FileMakerと相性の良い分野とは?
-ノーコード(Notion/kintone)との上手な使い分け-

現場の業務を素早く“道具化”したいとき、ローコードツールであるFileMakerは強い選択肢です。
一方で、Notion/kintoneといったノーコードは、情報共有や軽量ワークフローで威力を発揮します
(ローコード/ノーコードに関連記事はこちら)。
どちらも、運用開発にエンジニアほどの知識は不要ですが、ノーコードツールは、文字通り、ドラッグ&ドロップのみで開発可能、
ローコードツールは多少知識は必要ですが、その分、現状に合わせた便利な運用ができます。
本稿では、具体的な場面ごとに向き・不向きを整理し、選び方の軸を示します。
特に、FileMakerが本領を発揮するのは、次の条件がそろう領域です。
- 半構造化データが多い
伝票・点検表・症例記録・案件メモなど、テキスト+選択肢+写真の混在 - 現場ワークフローが主役
入力→確認→承認→帳票出力まで“一筆書き”で回したい - ゆるい個別要件
市販SaaSだと“あと一歩”足りない、微調整が多い - 小〜中規模チーム
5〜150名程度での共同作業(部署内/複数拠点) - マルチデバイス
PC・iPad・iPhoneを混在運用、オフライン入力も欲しい - 紙・機器連携
バーコード/ラベル印刷、スキャナ、ローカル機器とのやりとり
弊社が受けるご相談では、市販品だとあと一歩が足りずにDXを断念するというケースが多いです。
一方、FileMakerまで使わなくても済む場面も多数あります。
- 情報整理・ナレッジ共有(Notion)
ドキュメント/データベース/タスクを一体で管理 - 軽量ワークフロー(kintone)
申請・承認・案件・日報などをフォームから素早く運用 - 社内横断の可視化
関係者が多く“まず共有”を優先したいとき - 外部とのやり取り(限定的)
ゲスト閲覧や簡易な提出フォーム
それぞれの観点から、各プラットフォームの特長をまとめました。
観点 | Notion (ノーコード) | kintone (ノーコード) | FileMaker (ローコード) |
立ち上げ | 最速 テンプレ即利用 | 速い フォーム作成と一覧で 即運用 | 速いが要件合わせに 少し設計 |
データ構造 | 軽~中 ナレッジ+DB混在が得意 | 中 アプリ間リレーションは十分 | 中~重 複雑リレーションに強い |
ワークフロー | 軽量 (タスク中心) | 申請・承認が得意 | 画面遷移+承認+帳票 を作り込み |
デバイス | ブラウザ中心 | ブラウザ中心 (スマホ可) | PC/iPad/iPhone強い オフライン可 |
印刷・帳票 | シンプル出力 | シンプル~中程度複 | 複雑帳票・ラベル・ バーコードに強い |
機器連携 | ほぼ無し | ほぼ無し (プラグイン次第) | スキャナ・ローカル 機器連携が現実的 |
外部公開 | 文書共有は得意 | 申請フォーム等が得意 | 基本は認証ユーザー向け (社内) |
ガバナンス | 組織設定で標準化 | アプリ単位で 権限管理 | 権限・監査・ログ を細かく設計 |
向く規模感 | 個人~部門横断 の情報共有 | 部門横断の 軽量業務 | 部署〜小中規模で 業務アプリ |

では、具体的に何を基準に開発プラットフォームを選ぶべきでしょうか。
- 社内の情報共有がまず課題?
→ Notionで始める - 申請・承認フローを早く整えたい?
→ kintoneが合う - バーコード/帳票/iPadオフラインで現場を回したい?
→ FileMaker - “一筆書き”で入力〜承認〜PDF出力まで作り込みたい?
→ FileMaker - 関係者が多く“まず共有”が重要?
→ Notion/kintone
さらに、弊社が得意とするFileMakerでは、特に下記のようなケースに向いています。
- 案件・顧客・問い合わせ管理 :
見積・受注・対応履歴・添付を一元化 - 在庫・物品・貸出管理:
ロット/有効期限/棚卸し/写真記録 - 点検・品質管理:
設備点検、修繕処置ログ、監査対応の台帳化 - フィールド業務:
訪問記録、位置情報、サイン - 医療・研究の内部台帳:
検体/症例/機器ログのトレース、帳票出力 - 製造・作業指示:
指図書、進捗、出来高、写真つき作業報告 - 人事・勤怠・工数:
簡易ワークフローと承認、シフト作成 - 教育・試験:
受講管理、テスト、スコア集計、証明書発行 - バックオフィス連携:
見積・請求・入金の軽量管理、既存会計ソフトと突合
メリット
- ユーザインターフェイス〜データベース〜スクリプトを一気通貫で素早く作れる
- マルチデバイス&オフライン運用が現実的
- 帳票・バーコード・ラベルなど“紙と機器”が絡む現場に強い
- 権限・監査ログを細かく設計できる
デメリット /注意
- 大規模化すると設計の見直しが必須
- 公開Webや不特定多数向け配布には不向き
- 仕様追加が膨らみやすい
→“増やす前に消す”運用や一定の開発ルールが必要
どんな開発プラットフォームを選んだとしても、DX実現のためには、共通して大切なポイントがあります。
- 業務の一筆書きを紙に描く
(入力→確認→承認→出力) - まずは最小限
(一覧/詳細/入力/出力)だけで運用開始 - “増やす前に消す”会議を月1で実施
(項目整理・自動化候補の選定) - 運用ドキュメントはA4一枚
(ルール・窓口・バックアップ) - ツール選定は用途×文化×運用体制で。
機能比較だけで決めない
いかがだったでしょうか。
まとめますと、下記がポイントになります。
- Notion/kintoneは「広く・軽く・早く」進めたい領域で強い。
- FileMakerは「深く・一貫して・現場密着」で業務を道具化したいときに相性が良い。
- 大事なのはツール名よりも、“業務の一筆書き”をどう実装するか。
小さく始め、現場の声で育てましょう。
弊社では、伴走型の開発支援を行っています。
どんな小さなことでもご相談をお待ちしております。